ナチス・ドイツに略奪されたエゴン・シーレの名画「ひまわり」を巡り、美術オークションの世界で繰り広げられるスリリングな駆け引きを描いた映画『オークション ~盗まれたエゴン・シーレ~』。
フランス東部の工業都市ミュルーズ郊外の若い工員の家で、ひまわりを描いた風景画が発見される。鑑定依頼を受けたパリの凄腕競売人(オークショニア)、アンドレ・マッソンが贋作を疑いながらもその家を訪れると、それは28歳の若さでこの世を去った天才画家エゴン・シーレの作品だった。思いがけず見つかったこの傑作を巡り、さまざまな人々の思惑が交差し、彼らの人生を大きく変えてゆく―。
本作を手掛けたのはヌーヴェルヴァーグの巨匠ジャック・リヴェット作品の脚本を多く手がけ、「天才的ストーリーテーラー」「人物描写の大家」と評されるフランス映画界の重鎮、パスカル・ボニゼール。本作では美術オークション業界の内部構造や、富裕層と労働者階級の世界を見事に対峙させ、その巧みな脚本が絶賛された。
そのボニゼール監督が新作撮影中にも関わらず日本からのオンラインインタビューに応じた。ボニゼール監督は数回、日本を訪問したことがあり、「日本の好きなところはすべてが洗練されているところ。世界のどの国にもない独特の感覚でユニーク。日本料理も洗練されていて、本当においしい日本料理店に行ったことを覚えています」と振り返り、そして何よりも思い出深いこととして「フランス映画社の故・柴田駿さんとの友情です。私が『カイエ・ドゥ・シネマ』の編集者だったころ、彼が大島渚監督作品をフランスに紹介し、大島作品によって私の映画のビジョンは構築されました」と柴田氏の思い出と感謝をしみじみと語った。
また、日本を代表する美術界のスペシャリストや、著名人から推薦コメントが到着!このことについてボニゼール監督は「本当に嬉しいです」と喜びを語り、「実はオークション業界の方たちの反応が少し不安だったのですが、フランスの専門誌では好評を頂きました。日本でもクリスティーズ ジャパンの山口桂さんのようなスペシャリストが気に入ってくださったと聞いて大変嬉しくホッとしました」と笑顔を見せた。さらに今年、東京都現代美術館で行われた「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」が話題となった、高橋龍太郎のコメントについて「『真善美のもつれを描き出している』というご指摘は非常に深い意味を持っており、興味深い見方だと思います」と感想を述べた。
そして日本の公開に向けて「この作品が日本で公開されることは私にとって非常に重要なことで、感謝しています。ヨーロッパ的でありながらも普遍的なストーリーです。日本のみなさんに興味を持って頂き、楽しんで頂けることを願っています。アリガトウ!」とメッセージを送った。
<以下推薦コメント>(敬称略/順不同)
◆山口桂(株式会社クリスティーズ ジャパン 代表取締役社長)
本作は見事にオークション・ビジネスの「真実のドラマ」を描き出していると私は自信を持って云える。主人公アンドレはなんと理想的で羨ましいオークション・スペシャリスト人生を送っていることか。「私もアンドレになりたい!」と世界の中心で叫びたいほどだ。
◆高橋龍太郎(高橋龍太郎コレクション代表)
美はゆるぎなくそこにあるのに、それを巡る人間たちの物語は嘘や悪にまみれてしまう。
しかし美を生み出したのもまた人間なのだ。映画はこの真善美のもつれを見事に描き出している。
◆雨宮塔子(フリーアナウンサー・エッセイスト)
絵画を巡る歴史的事実もさることながら、登場人物たちの人間味溢れる掛け合いが“フランスあるある”でリアル!
最後に示されるマルタンの選択が、今も私の心を温め続けています。
◆高橋明也(東京都美術館館長)
ナチスの手を離れ大戦を生き延びたシーレの名作《ひまわり》。パリのオークション・ハウスを舞台に、復活の日は訪れるのだろうか。
セミドキュメンタリー・タッチの興奮の展開。
◆高橋秀治(豊田市美術館館長)
ナチスに退廃芸術とされたシーレの油彩の発見。それを取り巻く欲と心に傷を持つ人物たちが次々登場するなか、豊田市美術館のシーレ作品を思い浮かべると同時に、生活を変えない青年に救いを見た。
◆橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)
エゴン・シーレの名画がたどった数奇な運命──それだけでも十分ロマンティックな本作だが、オークションをめぐる登場人物たちが、よりこの作品を魅力的なものにしている。
◆本橋弥生(京都工芸繊維大学准教授/「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展 監修・キュレーター)
私たちが抱える欲望や虚栄心、他人の遺した美術品で利益を得ようとする愚かさ。作品を取り巻く醜い歴史の中で、誠実さが神々しいほどに輝く。暗い現代に差し込む一筋の希望の光を見た。
◆藪前知子(東京都現代美術館学芸員/「マティス」「石岡瑛子」展 キュレーター)
ストーリーの中心にあるシーレの作品ははっきりとは映されない。にもかかわらず、価値だけでないその磁力が登場人物たちを突き動かすのが伝わる。芸術の魔力が生み出す複雑な人間ドラマ。
◆中村剛士(青い日記帳)
突如その姿を現したナチスに略奪されたエゴン・シーレの「ひまわり」。長らく行方知らずだった名画に翻弄される人々を多視点で捉えた味わい深い作品。
◆藤原えりみ(美術ジャーナリスト)
計らずも絵の所有者となってしまった工場労働者の青年。一枚の絵の発見をめぐってアート業界の人々の思惑と欲望が入り乱れ、この絵がナチスの略奪品だったことが判明していく。サスペンス的展開のハラハラドキドキをご堪能あれ。
◆鈴木芳雄(美術ジャーナリスト)
1枚の絵が現れて
さまざまな人生が一直線上に並ぶ
それはまるで惑星直列のように
◆矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)
アートの世界を扱う内容だが、各人物のキャラクターが際立つエピソードを的確に配置しながら、90分という理想的な長さの中で起伏に富んだ物語を完璧に仕上げるボニゼール監督の仕事そのものが、アートだ。
2025年1月10日(金)、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 ほか 全国ロードショー
『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』パスカル・ボニゼール監督よりメッセージ&美術界のスペシャリストから推薦コメント到着!
©2023-SBS PRODUCTIONS
12月19日(木)